ノマドランド
良い点
- ノマドランドを知れる
- 美しい自然
- 人間の生き方、自由さを考えさせられる
悪い点
- 好き嫌いはありそうな映画
- 生き方に共感できない人も多いかも
「現代の遊牧民。自分らしさ、自由さ」
どんな内容?
車上生活をして自由に暮らしている、ノマドランドという人々がアメリカにいる。彼らは外から見るとホームレスと間違えられ、厳しい労働を担っているが、実は心は自由人で大自然の素晴らしさを一番知っている放浪の民である。彼らの生き方をファームにいる仲間を通じて描いた作品で、「何が幸せなのか」という人生の生き方を考えさせられる作品になっている。また、美しい大自然を満喫させてくれている。
冒頭のストーリー
夫を亡くし、住み慣れた街を出てきた「ファーン」(フランシス・マクドーマンド)。現在はバンタイプの車を自分なりに住みやすく改造し、一人だけど自由な生活を楽しむ「ノマドランド」という人々の一人として、自由な生活をしています。Amazonの配送の仕事などを定期的にやって生活費を稼ぎ、困窮者的にも見えながらも自分としてはその生き方しかないとわかって、ノマドランドの生活をしています。
ノマドランドとは
2008年、リーマンショックの破綻に端を発する未曾有の経済危機が全世界を襲った。その影響で、家を失った人々は自家用車で寝泊まりし、働く口を求めて全米各地を動き回っていた。専門職での経験があったとしても、それを活かせるような職がほとんどなく、安い時給で過酷な肉体労働に従事するほかありませんでした。
そんな不安定な状況下でも、彼らは自尊心と互助の精神を保持し続けていました。彼らは、車上で気ままに移動しながら暮らしている。仕事は定期的な仕事についたり、見つけたアルバイト的な仕事で稼ぎながら暮らしています。彼らは決して連むことなく、一人で気ままに好き勝手に暮らしていて、たまにそうした仲間で集いながら情報交換や物の物々交換などしています。
そうした、車生活の自由人が米国に一定数いて、彼らを「ノマドランド」と呼んでいます。ノマドとは遊牧民と言う意味で、彼らは“現代のノマド(遊牧民)”。決して自分で好きで選んだわけでなかったものの、そのうちに自由さと自然の中で生きていくことで人間らしさを見つけるなど、自分ならではの生活を楽しむことを知った人達を「ノマドランド」と呼んでいます。元には戻れなく、そうした環境で一生を終える人もいます。ノマドランドはホームレスではなく、自由と自然を楽しむ生活をしている誇りももっているハウスレスの人々です。
作品解説
言わずもがなのアカデミー賞受賞作品。アメリカの車生活を送る一定の人々の生活を通じて、貧困の社会問題、自由な時間の大切さ、自然の素晴らしさ、そして人と人のコミュニケーションと孤独を、描いた作品。
ファーンの姿を通して、「現代のノマド」の実像を描き出しています。ノマドランドの生活は、決して今の社会では豊かとはいえず、どちらかと言えばホームレスに近い貧困生活者に見えますが、実は生活自体やその生活の心は豊かで、その生き方を通じて人間のあり方、自由を感じ、自然の美しさを堪能する生き方がわかる作品となっています。自然の美しさの画像だけでも楽しめます。好き嫌いがあるようで、平均点数は高くありませんが、是非一度は、見てもらいたい作品。
2021年のアメリカ合衆国のドラマ映画。クロエ・ジャオが、脚本、製作、編集、監督を担い、主演はフランシス・マクドーマンドが務めた。本作はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を原作としています。
第77回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞した史上初めての作品となりました。また、第78回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)と監督賞を受賞、2021年4月の第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞の最多3部門を受賞しました。
(一部ウィキペディアより)
面白いポイント
①自由な生き方
人間の生き方は色々あって良いと思うもので、社会からは落ちこぼれと見えても、実は自由人としては最高の行き方かもしれません。山奥で自給自足をしている人とも繋がるものがあるのではないかと。今の私にそれができるかはわかりませんが、この生活もありかと思わせるところもありました。
都会に暮らし、豊かだがいろいろな制約や自分を失って生きている人々もいる中、この生き方は、一つの生き方だとと思います。
以下、一部ネタバレあり。
ネタバレ注意 (開く)
最初は望んでこの生活をすることになった人は多くないかもしれませんが、この自由さを知ってしまうと後戻りができないようです。映画でも、老後に子供と定住生活に戻ることにした彼氏の下で暮らそうと思ったが、結局その生活は自分には合わないとして、元のノマドに戻るシーンがあります。自由さを知った彼らは、元の社会には戻れないと知っているようです。それが私たちの現在の生活でも考えられることで、都会の豊かさよりも田舎の自然の魅力を忘れられないで、田舎にUターンした自分と重なる点もありました。
②自然の美しさ
この映画を通じて、何事にも代えられない自然の美しさを見ることができ、それだけでも十分価値があります。通常の有名な観光地ではなく、こうした大自然を感じる美しい自然が、生活の一部になっているアメリカ特に田舎は、素敵ですね。
あらすじ
主人公の60代女性「ファーン」(フランシス・マクドーマンド)は「現代のノマド」の1人である。ファーンはネバダ州エンパイアで臨時教員をやっていたが、リーマンショック後、企業の倒産とともに長年住み慣れたネバダ州の企業城下町の住処を失った。工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、その煽りで彼女も家を手放す羽目になった。途方に暮れたファーンだったが、自家用車に最低限の家財道具を積み込み、日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出た。
キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩いていた。その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちと交流を進めていく。教師の経験もある知識の高い人でありながら、車上生活と過酷な臨時社員に疲れはしているが、今の生活を別に悲観することなく生きている。
近くで車を止めていた老婦人のノマドランドの「リンダ」(リンダ・メイ)と、つきつ離れつの関係でしばらく生活をしていた。彼女から多くのこと、特に自然と一体になる生活のすばらしさを聞いて、自分でもアメリカの大自然を楽しむことに。映像では、観光というよりも、ノマドランドの人々が日常でも見られるアメリカの大自然が映し出さ、それだけでも楽しめるほどです。
キャスト
メインキャストは、「ファーン」(フランシス・マクドーマンド)。彼女と同じノマドランドとして暮らしている年老いた老婦人の「リンダ」(リンダ・メイ)、ファーンに好意をもつ「ディブ」(デビット・ストラーザン)などが共演。
ファーン(フランシス・マクドーマンド)
夫が死亡し、仕方なく車上生活をすることになり、ノマドランドとして暮らしている。今の生活を変えることはせず、昔の思い出を車に詰め込んで暮らしている。そうした生活の中で、交流したノマドランドのリンダに自然の素晴らしさと自由さを教えてもらい、自分もその経験の旅に。
こうしたノマドランドの一人を演じたフランシス・マクドーマンドは、美人とは言えないがノマドランドの大変さと楽しみを演じたところは、好演と思えます。
隣のノマドランドの老婦人 リンダ(リンダ・メイ)
ノマドランドとして自由な生き方を選んだ老婦人。彼女は、自然の素晴らしさと、自由の大切さ・素晴らしさをファーンに教えました。
このノマドランドの老婦人をリンダ・メイが好演技をしています。
ファーンに好意をもつ男性 ディブ(デビット・ストラーザン)
子供との生活を捨てノマドランドの生活をしているディブ。高齢になり老後が心配になって、ファーンとも相談して、子供のもとに戻ることを選択。
このディブ役にデビット・ストラーザンが演じた。可もなく不可もなくの印象か。
感想
ノマドランドという人々が、一定数いて生活しているということを初めて知りました。彼らは、現在の遊牧民で、ジプシーやモンゴルの遊牧民にも通じるところがあるかもしれません。自然の素晴らしさを知り、楽しむことを知り、自分のためだけに自由に生きています。
お金は必要になったら働くことで何とか暮らしていくが、働くことが目的でなく、「自由な生活を維持するために働く」という人間本来の生き方をしている気がする。彼らの生き方は、現在の社会の物差しで言えば豊かでなくむしろ貧困者かもしれないが、その生き方は羨ましさすら感じられ、田舎に戻って暮らす人と、自然の中で生きる生き方に通じるものがあるような気がしました。
何か人間の生き方として良いのかなど答えはなく、各自の生き方は知り尊重していくことが大切だと思いました。また、映画の中の自然の美しさは、それだけでも十分見ごたえがあり、それだけでも十分楽しめます。